White Paper
s-Business: Defining the Services IndustryS-business
(s-ビジネス: サービス業界を定義する) <全訳>

  Stephen W. Brown, Ph.D. (ステファン・W・ブラウン博士)
  Fred Van Bennekom, Dr. B.A.(フレッド・バン・ベネッコム経営学博士)
  Keith Goffin, Ph.D.(キース・ゴッフィン博士)
  Al Hahn (アル・ハーン)
  James A. Alexander, Ed.D.(ジェームス・A・アレキザンダー教育学博士)

  
■ 翻 訳: 熊谷  決 (AFSMI『さむらい』支部 役員)
  
原文はこちら(PDFファイル,65KB)


目 次
  イントロダクション
  全ての組織はs-ビジネスに移行しつつある (ステファン・W・ブラウン博士)
  s-ビジネスを支援する製品を設計する (フレッド・バン・ベネッコム経営学博士、キース・ゴッフィン博士)
  サービスの販売: s-ビジネスの力を発揮させる (アル・ハーン)
  今日の普段のビジネス形態から明日のs-ビジネスへ転換する
   (ジェームス・A・アレキザンダー教育学博士)
  AFSMインターナショナルについて

  [注: 金額の円換算は\120/$による。]




 イントロダクション

なぜ "s-ビジネス" (s-Business)なのか

 このs-ビジネスがどのようにして生まれ、なぜそう名つけられたのか、疑問に思われることだろう。 ことは陽光降り注ぐ南西フロリダで始まる。 デイブ・ヘナルト(Dave Henault, AFSMI前専務理事、CEO)、ピム・ボンセル(Pim Bonsel, AFSMI、EMEA副会長)と私(ジョン・ショーエンワルド、AFSMI専務理事、John Schoenewald, CEO)が、デイブ宅のベランダに集まったのは2001年6月の日曜の午後であった。
3人は、サービス業界全体をじっくり考えるために集まった思考リーダーとして活動していた。 それはどの程度の大きさなのか。 何が含まれるのか。 どのように定義されているか。 なんとしたことか!どれも重く困難な質問であった。

 サービスは、今日の成功ビジネスの核となってきた。 もはやハイテクだけということではなくなっている。 過去20年を振り返ってみても、サービスはその複雑さを増し、業界の中にいる私どもをも混乱させている。 それを定義することが難しくなっている。 ハイテクとは何か。 サービスとは何か。 サービス業界の外にいる人達が、それを理解しようとして困難に突き当たっているのが想像できるだろうか?

 例えば、サービスは、目に見えないという特徴を理解しない製品中心(管理、製造、販売)の人々との経験を私どもは持っている。 サービスに直接触って感ずることはできないが、それが良い場合と悪い場合を私どもなら言うことはできる。 ところが、それがどのように売られ、管理され、提供されるのか。 財政面ではどうなのか。 近隣や夫婦間、友達同士あるいは他部門にいる同僚にさえ、ハイテクのサービスを説明することは難しいということをこの業界の誰もが認めざるを得ないところである。 ハイテク・サービスはどのように定義され、それを構成するものは何なのであろうか?

 初期の頃(60年代から80年代迄)では、基本的にサービスはコンピュータと共に定義されていた。 本質的に、それはハードウエアとソフトウエアの修理とサポートであった。 当時はこのように単純明快だった。 ハイテク・サービスとして皆が思い浮かべるビジネスである。 そのうちにそれが変化したうえに、更に現在のインターネットの世界では急速な変化が継続している。 そうした今日において、会社組織の中で果たすサービスの役割は増大し、サービス産業を単なるハイテク・サービスとして見るのではなく、もっと大きなものとして捉えている。 これがs-ビジネスの考え方の基本なのである。

 先の話を続けると、デイブとピムそれに私の3人は、10年前とは格段の差をつけているハイテク・サービスの複雑さに話が及んでいた。 更に業界標準となるような、共通定義の話に移っていた。 それを何と呼ぶべきであろうか。 私がe-ビジネスとm-ビジネスは、現在では普通に使われていると話していると突然、s-ビジネスという言葉が私の口をついて出た。 不自然でなく妥当な選択に思えた。 「s」の意味は何であろう?サービスやサポート、思いつくもの何でもいい。 私どもの考えでは、それは「全て」のサービスを意味しているわけだから。 s-ビジネスは全ての業界にまたがるもの。 これが、今日私どもが知っているサービスの実態なのである。

 s-ビジネスが出たからには、その名前の効力を高めることが次の大きなステップであった。 それをどのように行なうか?ホワイト・ペーパー(特定テーマについて纏めたレポート)を作り、そこでそれを定義しその信頼を高めることを私は決めた。 最初に思ったことは、草稿する人を誰か見つけること。 同僚幾人かに電話し、彼らの興味を聞いてみた。 一人一人に考え方を全部説明し、私どもの業界だけに留まらず、いかに他の多くの業界にも適合するものであるかということも明確にした。 これにかなり時間がかかったのがお分かり戴けると思う。

 私が話した人は皆興奮した。 考え方に共鳴してくれるだけではなく、喜んで引き受けてくれた。 このような大きな考え方を持った質の高い人たちが、私のネットワークにいることは幸運なことである。 スティーブ・ブラウン博士(Steve Brown, Ph.D.)はアリゾナ州立大学(Arizona State University)の教授で、そこのサービス・リーダーシップ・センター(Center for Services Leadership)のセンター長もしておられるが、私どもの教育委員会のメンバーでもあり、またe-ビジネス・マーケティングにおける先駆者でもある。 フレッド・バン・ベネコム経営学博士(Fred Van Bennekom, Dr.B.A.)とキース・ゴフィン博士(Keith Goffin, Ph.D.)は、共に長期に亙っての業界の専門家であり学者でもあるが、s-ビジネスを支える製品を設計する分野において、広範な調査研究を行なって戴いている。 アル・ハーン(Al Hahn)はs-ビジネスの戦略や営業活動、それに、マーケティングにおける活動で、世界にその名を知られている。 ジム・アレキザンダー教育学博士(Jim Alexander, Ed.D.)は、AFSMIでのプロフェッショナル・サービスのコンサルティング・ディレクターをして戴いており、プロフェッショナル・サービスやe-ビジネス、それに、s-ビジネスに係わる文化的および組織的変化について、広範で深い知識をお持ちの方である。 個人が、独立してそれぞれが主催者となりえる素晴らしい人たちばかりであるが、驚くべきことに皆が共同参画を望んだ。 s-ビジネスの価値を見出し、このプロジェクトに共同で当たることに、それぞれが皆諸手を挙げてご賛同戴いたのである。

 その結果がこのホワイト・ペーパーとなった。 s-ビジネスの現在と将来動向について、異なる4視点から眺めている。 最初のセクションでは、スティーブ・ブラウンがs-ビジネスの大きな絵を描き、それが全サービス組織を包含しているさまを展望している。 次のセクションでは、フレッド・バン・ベネコムとキース・ゴフィンが、長期に亙って優位に立つための差別化のための企業の製品とサービスを見ている。 アル・ハーンは、第3のセクションで製品市場からサービス市場への移り変わりとその複雑さを調べている。 そして最後のセクションでは、ジム・アレキザンダーが、新しいs-ビジネスの世界ではどうしても取り上げられねばならない組織的変化と、それが及ぼす文化的影響について取り組んでくれている。

 s-ビジネスは今まさに現実であり、またこれからの毎日の時間経過と共に、世界中のビジネスに影響を及ぼし続けることになる。 多くの企業が、製品主体から製品とサービスをセットにしたものに、焦点を移していくのを見ることになるであろう。 進行中のこうした変革は、サービスに更なる戦略的役割を持たせることになる。 ある時点で、会社はサービス主導となるであろう。 製品営業がまずありきで、サービスは単なる腰ぎんちゃくであったかつての立場とは逆転し、製品とそのサービスだけの難局を生き延びることで、s-ビジネスは主導的立場となるのである。 今日のIBMが、このいい例である。


s-ビジネスにおけるAFSMIの役割
 最も興味津々なのは、s-ビジネスが業界を定義しつつあり、AFSMIがその考え方を作り世界にそれを広げようとしていることである。 今後、s-ビジネスの考え方を展開したホワイト・ペーパーや研究成果、それに説明が出てくるであろう。 それに私どもの月刊誌、『s-Business』でも新たな焦点記事を取り上げていく。 それに加えて、AFSMIの役員とそのスタッフが、業界の知識人と共に世界中でs-ビジネスのメッセージを伝えることになるであろう。
1975年以来、AFSMIは調査研究や情報それに教育を、企業とその会員に提供してきた。 そのことを今後も続けるつもりである。 s-ビジネスの認識を持つことで、サービスが将来の成功と生き残りのキーであることを、否定できないと認識している複数の業界に渡って、私どもがその主導をとることができると信じている。

ジョン・ショーエンワルド(John Schoenewald)
専務理事(CEO)
AFSM International



  
 全ての組織はs-ビジネスに移行しつつある
ステファン・W・ブラウン博士 (Stephen W. Brown, Ph.D.)

 e-ビジネスだけでなく、m-ビジネスにさえ注意を払っていたのにも係わらず、全ての会社組織は、サービス、すなわち、s-ビジネスの割合を増大させている。 顧客の要求とビジネス機会の両方が、ともにこの改革を推進している。 どの会社が、世界で最大のサービス企業なのかと人が訊ねたとする。 ディズニー社(Disney)?シティバンク社(Citibank)?アメリカン・エクスプレス社(American Express Company)?いくつかの視点で、答えはIBM社とゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company「GE社」)なのである。 双方とも、かつてはサービスよりも製品でよく知られた企業である。

 s-ビジネスを議論する時に、一般はマリオット社(Marriott International, Inc.)やフェデックス社(FedEx Corporation)、それにAT&T社(AT&T Corporation)に関心を寄せることであろう。 サービス・ビジネスを定義する考えはまだまだ定着しておらず、しかも急激に変化している。 特にITのビジネス対ビジネス(B2B)市場での変化は顕著だ。

 IBM社は、IBMグローバル・サービス(IBM Global Services)としての認知されたブランドを作り上げた。 s-ビジネスは年間330億ドル(約3兆9,600億円)以上の売上となり、会社全体の半分以上の人員を雇っている。 10年前は、サービスはIBM製品のみをサポートするものとして提供されていた。 その後90年代中ごろには、顧客をつなぎとめておく目的で展開された。 IBM社は今日、サービスを自立したビジネスとして見なしている。 ITオペレーションをアウトソーシングすること、システムズ・インテグレーション、ネットワーキング、コンサルティング、研修、それにプロダクト・サポートはIBMグローバル・サービスが提供するいくつかのオファリングの例である。 特徴的に、顧客関係をベースにして、将来を見据えて購入される傾向があることから、サービスのいくつかは年次連続的な売上を確立している。 IBM社は950億ドル(約11兆4,000億円)以上のサービスのバックログを蓄積するに到っている。 ますますサービスがIBM社を元気つけているのだ。

 製品優先から製品とサービスの会社へとのこうした変革は、何もビッグ・ブルー[訳注:IBM社のニックネーム]に限ったことではない。 今日のGE社は電球とトランスをはるかに超越したものになっている。 ジャック・ウエルチ(Jack Welsh)が、積極的にGE社を導いて、エンジニアリングやメディア、医療、財政、それにコンサルティング・サービスの会社にしてしまった。 GE社のビジョンは、高品質の製品も販売するグローバルなサービス会社になることである。

 ヘルスケア(健康管理)セクターもこうした変革がおきつつあるもう一つの局面である。 ジョンソン&ジョンソン(Johnson & Johnson)社やベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson and Company「B-D社」)、それにマッケソン社(McKesson Corporation)のような製品製造とサプライヤーの会社が、病院がよりコスト効率のよいものになるようにと、その支援に奮闘しているのである。 コンサルティング・サービスを行ないながら、顧客とのより幅の広く、かつ深く、更により戦略的な関係を築きつつあるのである。 こうした親密さが、サービスの拡大を支援し、従来製品についても病院との特権業者として見なされる手助けとなっているのである。

 フォーチュン500社に入っているB-D社は、最も優秀な顧客担当者に病院の上位管理者を訪問するようにさせることで、そのs-ビジネス拡大を始めるきっかけとした。 訪問するにあたって、顧客担当者が教えられていたのは、何物も推進したり販売したりしないこと、そのかわりに、医療関連のリーダーに何か夜も眠れないようなことは無いかどうかを尋ねることであった。

 「自分達の医療器具や製品のよさをしつこく説明するかわりに、担当者は良く聞きそして学び、情報の金の宝庫に圧倒されてしまいました」と語るのはデイブ・パルシファー(Dave Pulsifer)B-D社ヘルスケア・コンサルティング・サービス社長である。 「彼らが聞いたのは、以前では充分に理解されなかったことだが、医療費返済の変化でもたらされることになった運用コスト削減のためのとてつもないプレッシャーについての詳細な観察であった」。

 B-D社は、これらのフィードバックを顧客の課題に対応させた提案型のs-ビジネス・オファリングとして開発する基盤として活用し、付加価値サービス組み込み市場の先導をきることになった。 こうしたサービス範囲を加えることで、B-D社は顧客にとってのソリューション・プロバイダーとなりえた。 見返りとして、彼らの顧客との結びつきはより強固なものとなり、共に恩恵をこうむることになった。

 アリゾナ州立大学(Arizona State University「ASU」)でサービス・リーダーシップ・センター(Center for Services Leadership「CSL」)を80年代半ばに立ち上げたが、その時はIBM社やフォード社(Ford Motor Company)のような会社の参画を得る可能性は、レーダー・スクリーンの片隅にも捉えられないものであった。 90年代半ばになり、ようやくCSLは、これらの会社や多くの他の製品主導の企業でのサービスの重要性を充分に認識することになった。 今日、ASUセンターでの応用調査やマネジメント研修活動の多くは、これらの企業とともに行なっており、IBM社やヒューレット・パッカード社(Hewlett-Packard Company「HP社」)、それにフォード社は、サービス市場とマネジメントのスキルをつけたASUのMBAを積極的に採用する企業の仲間入りをしている。


なぜ変革なのか
 なぜ今先端経済で劇的な変革が起こっているのか?製品製造業は、顧客サービスを提供してはきたが、新たな"サービス"は、売上と収益をもたらすもっと広い形のオファリングになっているのである。

 顧客要望は、著しい変化の主要な理由である。 地球規模の競争と技術の飛躍が、企業をしてその核(コア)となるコンピテンシーに焦点をおき、他の多くのビジネス活動を外注するようにならしめている。 ピツニィ・ボーズ社(Pitney Bowes, Inc.)は、長い間ビジネス顧客用郵便機器では市場リーダーであった。 がしかし、多くの顧客は社内郵便活動をコア・コンピテンシーとは見なしてはいない。 そこで1000社以上のビジネス企業が社内郵便活動のためにピツニィ・ボーズ社に外注しているのである。 ITでの複雑かつ急速な変化はますます多くのビジネス企業がITサービスのさまざまを肩代わりしてもらうためIBMグローバル・サービスや他と契約するのを推し進めている。 これらの多くの場合、企業はIBM社のハードウエアあるいはソフトウエアを使用しているわけではない。 それでも、真の「ソリューション・プロバイダー」として、IBMグローバル・サービスは、顧客の将来のIT購入についての公平なカウンセルを提供しているのである。

 製品主体の企業がs-ビジネスになる二つ目の理由として、独特な競争力向上への挑戦がある。 製品の日常品化は、多くの業態で現実となっている。 製造業者は製品の差別化を図ることの困難さに気が付いている。 それが利益を圧迫している。 ところが、s-ビジネスは、維持可能な差別化の形をしばしば提供し、より高い利益率を得ることも可能ならしめている。 製品主体の企業では、サービスのほうがより利益が得られると気がつき始めている。

 この収益性の要素は、仕立てあげられるサービスが、顧客のために入念に計画されていることを、企業の知的資産が示すことができて初めて現実のものとなる。 知的作業者が企業のサービス製品となり、彼らの技能と経験が企業をして、市場相場以上のプロフェッショナル料金での利益を可能ならしめているのだ。

 製品主導の会社をs-ビジネスに拡大することは、見た目よりも困難である。 ヨーロッパが本拠の消費者食品の巨人ユニレバー社(Unilever PLC)が、最近食品の安全についてのコンサルティング・ビジネスを立ち上げた。 大衆にとってはますます関心の高くなるところである。 公の席で、オランダのダイバーセイレバー・コンサルティング社(DiverseyLever International B.V., The Netherlands)のサーハン・テオドレスコ(Serhan Teodoresco)副社長がスピーチした。 「私の最大の挑戦は、製品主導のユニレバー社役員に、製品に対してサービス・ビジネスに投資することの違いに付いて教育することです」。 製品は、典型的に将来の財政的利益を実現するため初めの段階での大きな投資が必要だ。 これに対して、s-ビジネスでは、初期投資は比較的少なくて済むが、ビジネスを成長させるために継続投資が必要となってくる。 これはしばしば追加人員の形をとる。 しかし、継続して得られる利益はとてつもないものなのである。



  
 s-ビジネスを支援する製品を設計する
フレッド・バン・ベネコム経営学博士 (Fred Van Bennekom, Dr. B.A.)
キース・ゴフィン博士 (Keith Goffin, Ph.D.)

 長きに亙って競争優位にたつには、会社が持っている製品を競争相手から明確に差別化することでなし得えられる。 この差別化でより価値の高いものを提供することもあり、高めの価格をつけられることにもなる。 差別化された製品は、他社への切り替えコストも高くなり、このことで繰り返し購入して戴くよう顧客をつなぎとめておくことにもなる。 差別化を求める中で、戦略的思考の市場参入者が認識しているのは、顧客は単に目に見える製品に集中してはいないということ。 顧客は製品を高めるサービス、例えば財政面および支援面でのサービスのようなものに、厳しい目を向けているのだ。 このようなことなので、差別化の好機を見つけ出すためにも、製品とサービスを一まとめにした全容を精密に調べて見る必要がある。 まずは目に見える製品の特長を調べるというのが、今までの典型的なやり方であったが、製品とサービスを組み合わせた中での価値を高めるサービス、すなわちs-ビジネスが、より肥沃な土地であることが分かることになるであろう。 ところが実際は、会社がs-ビジネス・モデルに移行する場合に話になるのは、サービスを増大できる目に見える製品のことなのだ。

 伝統的に、差別化を提供する中での顧客サービス機能の戦略的位置つけは見過ごされてきた。顧客サービスは、多くの会社で無視されたりあるいは軽蔑さえされていたのが実情である。 サポート・サービスを見る皆の目は、それが「苦情を言っている顧客」に対応する「必要悪」であるとの見方であり、製品に関する顧客の問題を無理やり調整する、すなわち製品の修理やサービスといった内容で、s-ビジネスとしては非常に限定されたものであるが、それがサービスの唯一の役割との認識であった。 行儀の良い子供のように、企業の中では顧客サービスは与えられた仕事をしていればよく、それ以外に目立ったりすべきでは無いとされていた。 しかしながら先進企業では、その態度に変化が見えてきている。 以下にその三つの理由を挙げる。

1.サービス売上と収益の潜在性
 顧客サービスは、売上と収益の重要な源泉となった。 実際サービス・マージンは、製品そのもののマージンを追い越しているのである。 サービス契約は、周期的に販売するハードウエアあるいはソフトウエアの売上減の流れを相殺できるほどに、予約販売型の売上の流れをも作り出している。 ある業界では、電話でのサポートのようなものについては、顧客は金を払いたがらないというのを、サービス市場参入者が見ている場合があるが、顧客サポート・サービスの利益潜在性は、長い間多くの企業では認識されてはいた。

2.満足を通して顧客をつなぎとめておくこと
 多くの市場で見られるが、顧客満足度を達成し、顧客が繰り返し購入する行動に強い影響を与えることにおいて、サービスは鍵となる役割を果たしている。 質の悪い顧客サービスはかなりの否定的影響を与え、今の顧客を失い、見込みの顧客をも思いとどまらせてしまう。 常に顧客と交流を持つことで、顧客サービスは顧客を会社につなぎとめておくことが可能となり、顧客をマネージすることの手助けとなるのである。 会社が成長し、リピート・セールスの重要性が増してくると、顧客サービスもこの顧客マネージの面でますます重要視されてくる。 カストマー・リレーションシップ・マネージメント(CRM)は、現在のマネジメント専門用語の一つとして喧しいが、CRMを実際に達成するうえで、顧客サービスが最適な位置に居るということが忘れられがちなのである。

3.管轄するもの全体の総合的利点をフォーカスすること
 新たなテクノロジーは、サービスの多くの局面を変えてしまった。 今日の製品はますます信頼性が高くなり、このことが保守と修理の重要性を薄めてしまっている。 一方で、機器とその運用環境の複雑さも増して来ている。 製品の組み込みや顧客研修、あるいは電話でのサポートといったようなサービスの多くの局面は、ビジネス・モデルとして基本的なものになっている。 製品の複雑さは、製品ベンダーと顧客双方にサポート・コストの増大となった。 これらのコストの中には、製品をビジネスに適合させるために受ける研修時間、また製品がストップした時間の機会喪失コストも含まれる。 顧客は、管轄下のコスト全体(TCO: Total Cost of Ownership)にますます目を向けるようになり、製品の使用で得られる利点と比較し、それがさらに製品責任面へも貢献するサービスの重要性を協調することになるのである。

 これら三つの要因により、s-ビジネス機会は競争優位の源であると企業が見なすことになった。 その可能性を確立するためには、4項目の質問が投げかけられねばならない。

1. 顧客のニーズは何か? 顧客ニーズは、設置から始まり、ユーザー研修や保守やそれに修理といった全てのサポート局面で分かっていなければならない。 潜在的あるいは発展的なニーズで顧客が求めているもので、まだレーダー・スクリーンにも映し出されていないサービスへのニーズに監視を怠ってはならない。 顧客の運用にとって、サポート・サービスの価値がどのように見られているかを理解していなければならない。 ある市場では、顧客自身が行なってしまおうとするところがある。 それはすなわち、自身でサポート業務を行なおうとし、またできるということを意味している。 会社は、サポート市場における異なった業界セグメントをもチェックすべきだ。 顧客のグループによっては、異なったレベルあるいはタイプのサービスを求めているかもしれないのである。

2. 競争力向上の枠組みの中で、競争相手はs-ビジネスをどのように位置つけているのか? 相手のサービスと価格をベンチマークすることがまず基本だ。 しかしながら、驚くことに多くのハイテク企業はこれを行なうことを忘れてしまっている。 その会社が参入している業界以外のベンチマーキングも行なわれるべきだ。 ある市場での先進企業はそれ以外の市場にも適合するs-ビジネスのモデルを開発しているかもしれないのである。

3. s-ビジネスの提供面で製品の流通チャネルの果たしている役割はなんであろうか? どのようなことができるか? 特定のサービスにチャネル・パートナーを活用することは低コストで高品質のサポートを提供するのに役立つことであろう。 しかしながら、会社としては、サービスの流通チャネルにどの程度のコントロールを行なうかを決めておく必要がある。 チャネル・パートナーにより提供されるサービスは、OEMのことを思いださせてしまう。 OEMはチャネル・パートナーのサービス活動に関係しないとしてもである。 多くのチャネルで流通を司るものは、サービスをキーとなる製品としており、保守部品の購入以外の点でOEMとの関係を持つことに抵抗することであろう。

4. 顧客がベンダー製品から得られることになっている利点を得るのに、支援能力の向上はどの程度役立つであろうか? 支援能力の設計(DFS: Design for Supportability)とは、製品設計時点での支援要求についての考慮であり、それを実現することである。 それが管轄するもの全てのより高い総合的利点を提供するキーであるにもかかわらず、会社はしばしばこれを忘れる。 製品支援能力の向上は、製品の特徴としての多くの付属品よりもより良いROIを示すことが多々ある。

 最初の三つのカテゴリーは、利益と顧客コントロールの可能性を見つけ出すうえで顧客サービスへ重要な質問を投げかけている。 最後のカテゴリーは、広範な企業活動のなかで、特に製品設計プロセス面での顧客サービスの役割に言及している。 なぜなら、そこが競争力優位に立つためには最も重要な部分だからである。

 伝統的に競争優位のための製品設計は、その特徴や、機能、それに、実績能力に焦点を当ててきた。 数年前には、設計者が製品開発サイクルの次工程のことを考慮するようになり、製造容易性が新しいクライテリアとなった。 新たに総合コスト責任(TCO)とそれに関連する利点が強調されると製品設計者は今や管轄製品のライフサイクルの観点での見方が必要となっている。 これが顧客サービスを戦略的照準と見なすようになり、この考え方では顧客サービスはもはや製品開発での付け足しではなくなってしまっている。 それどころか、製品とベンダーの支援能力の特性は肯定的製品責任を経験するためにも欠かせないものになっている。

 支援能力は単に修理や保守に留まらない。 サポートと製品責任の観点で五つの段階がある。 提供、使用、保守、追加、廃止である(図1参照)。 それぞれの段階で、顧客により多くの利点を届け、会社にとってもまた顧客にとってもコスト減になるようなs-ビジネスの機会を調べなければならない。 DFSのテクニックは、これら全ての段階の要因を製品設計プロセスに組み込んで、支援要求を最小化しかつ単純化し、製品責任であるところの顧客の総合利点を最大化するのを手助けするものである。 すなわちDFSの視点は、s-ビジネス戦術が顧客の運用面に真に価値を付与していることを確認するものなのだ。 そうでなければ戦略的弱点があるわけで、他社に食い物にされてしまうことになる。



図1. ●製品開発のサイクルと顧客の製品サポート・サイクル


 顧客との独特な関係を持ちえる顧客サービスには、五つの全ての段階に渡って支援能力向上のための個所を見つけ出す機会を与えられている。 顧客は何を達成しようとしているか、あるいは直面している課題は、その兆候は、それにどのようにして解決策が提供されるかということに関して、顧客とのやりとりのそれぞれでデータが副産物として作られるのである。 サービス・エンジニアはそのデータが捉えられているかどうかは別にして、これらに晒されているのであり、DFSが競争優位の源と認められている場合には、これらデータを収集することは、公然の戦略的活動となる。 そこで賢明な会社は、顧客サービスの真のコア・コンピテンシーは単に問題を解決するところにあるのではなく、顧客と製品使用についての知識と知恵にこそあるのであると認めている。

 だが、如何にして顧客サービスが、s-ビジネス推進のこれら戦略的役割を自ら行なえるようになるのであろうか? 成功するDFSテクニックの実施にあたっては、顧客サービス組織からではなく、会社全体としての上位の約束が必要である。 製品エンジニアにDFS手法を採用することを確信させるためには、顧客サービスは会社の中でのその立場を明確にし、またs-ビジネス・オファリングで補完した製品支援能力の向上の価値について、確固たるビジネス・ケースを作り上げる必要がある。 これは簡単ではない。 なぜなら、文化基準に対してと会社組織の中で顧客サービスが従来から見られているもの両方に挑戦するわけだから。

 さらに言えば、s-ビジネス戦術としてDFSに投資するということは、実のところ戦略的市場決定なのである。 実施されれば、DFS考慮は、製品とサービスのバンドルを再定義することになるであろう。 以前はサービスを増大することで提供されていたサービスの価値は、今や製品の中に部分が組み込まれている。 それでもしかし、会社や顧客が真の付加価値サービスに焦点をあてることで、新たなs-ビジネスの機会が作られることであろう。 サービス・マーケティングと製品マーケティングは、その価値提供を再度考慮しなおさなければならないであろう。 より高い総合利点責任のおかげで、コアとなる製品はより価値が高くなり、コア製品の価格で付加価値を得るには、価値ベースのマーケティング手法を取り入れなければならない。 これは簡単なことではない。 マーケティングや、セールス、それに顧客にとっても。 しかし、会社のs-ビジネス提供に基づいたこれらの革新的なビジネス慣行実施により、競争力地図を再編成する好機を提供することになるのである。



  
 サービスの販売: s-ビジネスの力を発揮させる
アル・ハーン (Al Hahn)

 s-ビジネスの傾向のいくつかは、ハイテク分野でかなりの期間に亙って見えてきている。 テクノロジー・コンサルティングやシステム・インテグレーション、災害対策プラン、それにカストマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)のような、企業規模のソフトウエア・アプリケーションの導入などにみられるようなプロフェッショナル・サービスは、過去数年に亙って二桁の成長を遂げてきた。 一般的に、サービスは過去5年間で見ると製品市場の伸びよりも早く伸び、今日ではハイテク全体売上の35パーセント以上にまでなっている。 一方では、製品主導の会社はサービスの展開に変革しようとして困難さにぶつかっている。

 エンジニアやテクニカル・マーケティング・スタッフ、それに営業員までもが、製品中心なためにs-ビジネスの潜在能力を認めることができないのだ。 営業は、営業テクニックを変更せざるを得ない局面にしばしばぶつかり、顧客のニーズ分析に多くの時間をかけ、製品特徴の説明には少しの時間しか割けなくなっている。 目に見えないサービスは、営業および市場活動によりリレーションシップにドライブされるアプローチを求めているが、これは強いテクニカル・バックグラウンドの人間にはチャレンジとなるのである。


ハイテク・エクゼクティブはs-ビジネス・モデルを心得ている
 過去においては、業界は極端に製品中心ではあったが、トップはs-ビジネスの時流に乗り遅れているわけではない。 2年前、デル・コンピュータ社(Dell Computer Corporation)のマイケル・デル(Michael Dell)が認めたのであるが、当時としては製品中心の会社であって、サービスからの売上はたった10パーセントを占めるに過ぎなかった。 しかし彼は、数年でサービスは全売上の50パーセントの貢献をおこなうとの予想をたてた。
 
 HP社、コンパック社(Compaq Computer Corporation)の両社は、今は合併によって問題を解決しようとしているが、s-ビジネスへの道をとろうとして初期の段階で失敗している。 コンパック社はサービス・ビジネスを得ようとしてDEC社を吸収したが、合併を台無しにしてしまった。 HP社は、昨年秋コンサルティング・ビジネスのためにプライスウオーターハウス・クーパー社(PricewaterhouseCoopers)を華々しく獲得しようとしたが、最終合意には到らなかった。 もしどちらかが成功していれば、両社とも今日のようには合併ということにはならなかったであろう。 コンパックとHP両社のそれぞれのCEOのマイケル・カペラス(Michael Capellas)とカーリィ・フィオリーナ(Carly Fiorina)は、今までにサービス面で力をつける考えを何度となく述べてきた。 サン・マイクロシステム社(Sun Microsystems, Inc.)会長スコット・マクニーリィ(Scott McNealy)も同様な表明をおこなっていて、サン・マイクロシステムズ社のサービス・スタッフと人員の増員に投資をおこなっている。 これらエクゼクティブは皆、最近の製品市場での元気の無さに直面している中で、プロフェッショナル・サービスは安定成長していることを見て取っているのである。


戦略的にサービス主導のビジネスは成功する
 2001年度ハイテク・ビジネスのほとんどが危機的に挫折する中で、サービスの戦略的価値がより明確になってきている。 今までの成功企業の多くが、本年度第一四半期に危機感を持った業績報告を行なう中で、IBM社はその目標達成になんらの問題も無く、実際にもそのサービス・バックログを850億ドル(約10兆2,000億円)から870億ドル(約10兆4,400億円)へ増大させている。 第二四半期では、160億ドル(約1兆9,200億円)の新規ビジネスにより、バックログを一挙に950億ドル(約11兆4,400億円)にまで押し上げてしまった。 ルー・ガースナー(Lou Gerstner)会長や2000年度年次報告書両者とも、IBM社を「サービス主導」と言及している。 その証拠に、本年度第二四半期のサービス売上額は、ハードウエア販売の86億ドル(約1兆320億円)に対し87億ドル(約1兆440億円)となり、IBM社の他の部分の売上額を超えてしまっている。

 非常に活気があり常に変化していたハイテクの世界で、こういうことがどうして可能なのであろうか。 サービスが素晴らしい製品群の影を薄くしてしまっているが、これがなぜなのであろうか。 手がかりは常に変化し、複雑化している今の製品にあると言っていい。 ハイテクは信じられないくらいの将来性を常に持っていた。 製品群は、生産性や効率性、コスト削減、顧客サービス、品質、などなどに革命的な変革をもたらすことができる。 企業は、しかし、有利面で約束されたこの土地には概していまだ到達していないであろうとの認識を持っている。 将来性の実現に到る前に、複雑化した製品群は変化し進化してしまう。 使用する側がそれについていけないのである。

 もう一つの問題は、この数年ほとんどのハイテク企業が"ソリューション"を約束してきたにもかかわらず、実際に提供されているのは箱だという事実である。 誇大宣伝された結果を得るために、購買側は精巧な製品の組み合わせを自分でするかEDS社(Electronic Data Systems Corporation)のようなITコンサルティングを雇って行なうかのどちらかであった。 今年の2月に出たAMRリサーチ社(AMR Research, Inc.)のCRM報告では、CRMコストの24パーセントがアプリケーション開発につかわれているに過ぎない、インフラやサービスに今の3倍から4倍の投資を計画すべきである、と警告している。 自分達の顧客のいらいらが分かり、また自分達の機会にもなるということで、IBM社は完全なるターン・キー・ソリューションを販売・提供する。 この場合特にe-コマースに力点をおいている。 これがIBM社にs-ビジネスのバックログを積み上げさせている主たる原動力となっているのである。

 IBM社は、製品を売るよりも前にその強力なコンサルタントを顧客に売ることで、サービスでのセールス活動をリードしている。 このやり方は、多くの製品製造業者とは大きく異なるところだ。 IBM社のコンサルタントは、IBM製品にフォーカスしないで顧客のトータルなニーズにフォーカスした顧客のためのソリューションのデザインを行なう。 IBM社にとっては、2倍の恩恵を受けることになる。 まずは顧客の財務資金により近づけることである。 完成されたソリューションになると、ハードウエアやソフトウエアの売上の50パーセントだったものを、10倍以上ものトータル額にまで膨らませることができるというわけだ! ハードウエアおよびソフトウエアの重要なメーカーであると同様に、世界で最大のITサービス・プロバイダーであるにも係わらず、IBM社だけでソリューションの全部分を提供できるわけではなく、最初の権利は得るがふさわしいパートナーを選択し残りの成果は譲っている。 IBM社はその製品と従来の製品サービスでの難局を切り抜けて、総売上と利潤を伸ばしている。 2番目の恩恵としては、コンサルタント主導のソリューションを提供することで、IBM社は顧客へ影響をより及ぼしマネージできることである。 こうしたことで不運なのは、CISCO社(Cisco Systems, Inc.)のようなIBMパートナー社で、IBM社の何千というコンサルタントを抱えているわけではなく、戦略的に優位な地点には立つことはできていない。


s-ビジネスが大きくなりすぎる不安?
 s-ビジネスで成功しているもう一つの会社はオラクル社(Oracle Corporation)だ。 2番目に大きなソフトウエア会社としては良く知られているところであるが、オラクル社の2000年度および2001年度の全体売上の56パーセントは、サービスから得ているのである。 これはオラクル社にとって初めてのことではなく、過去数年のいくつかの四半期では会社財源の60パーセント以上にサービスが貢献していたのを見てきている。 しかしIBM社とは違って、オラクル社はそのs-ビジネスの成功を宣伝しない。 サービスの強力な財政的貢献を、製品ビジネスの弱点のサインと証券アナリスト達から見られるのを恐れているのかもしれない。

 確かに、IBM社が言うところの新たなs-ビジネスのパラダイムを、多くのアナリストはまだ理解し受け入れてもいない。 2001年年次報告でオラクル社は、かなりのサポート(ソフトウエア・ユーザーへの電話でのヘルプ)売上を製品売上のサブカテゴリーとしてリストした。 これは、ポートフォリオの中でライセンス売上を強調し、s-ビジネスのあきらかな優勢さを薄めようとしていると思われる。 実際は、2000年と2001年両年でのサポートの二桁成長により、この期間での停滞気味のオラクルのライセンス・セールスを大きく超えているのである。


下降気味の市場の中でも戦略的貢献
 競争会社がお互いに生き残りをかけて争い、売るために総力戦になっている厳しいこの年、もう一つのサービスでの利点が注目されるようになってきている。 顧客はよいサービスを提供してくれるところにより引き付けられるものである。 使えるドルがますます少なくなる中で、購買側は予算の優先付けを厳しく行なう。 極めて重要なプロジェクトだけが予算をつけられる。 厳しい市場での価格効率というものを購買側が理解しているのは確かだが、一方で過去の実績に応じてベンダーの優先付けを行なってもいる。 そのようなわけで、サービス提供により過去の問題から会社を救い出したところには、不十分ななかからでも今でもドルが集まる。 約束をほごにした会社は生き残りが難しくなる。 繰り返しになるが、この傾向は新しいということではなく、新たに注目されるようになったということである。

 ハイテクの調査で長年気付いていたが、ありきたりの従来からのサービス、すなわちハードウエアの修理とかソフトウエアの電話サポートであるが、これも顧客を高い割合で引き止めておくのに貢献している。 安い製品価格で取引を完成させることは可能であるが、強いサービス・プロバイダーのみが顧客を引き止めておけることになっている。 こうした購買行動傾向が追加されて、プロフェッショナル・サービスが更なる成長機会を得ることで、今日のもがき苦しんでいるハイテク・ビジネスの中で、s-ビジネスは生き残りのために避けられないものとなってきているのである。


これは継続するであろうか?
 今日の残酷的に困難な経済状況では、今まで述べたことは全て意味をなすであろうが、成り行きが変わった場合はどうであろうか? 間違いなく製品売上は回復するであろう。 問題はその時のs-ビジネスの重要さである。 IBM社の2001年第二四半期報告では、このようなコメントがなされている。 「経済が回復すると、ドット・コム狂騒の時に好況であったこまぎれ製品メーカーが先導的立場に戻ってくるとの考えを、業界通のいく人かは持っているようである。 真実以上のものは何もあり得ない。 短期的に繰り返される業界の問題は、サービスでドライブされる業界を予告させる顧客の購買行動の根本的シフトとはまったく関係のないものである。 経済状態には関係なくこの新たな状況をリードするユニークな立場に私どもは立っていると確信する」。

 市場調査会社のIDC社(International Data Corporation)の最近の予想では、ハイテク・サービスでは、年間12パーセントの成長で2005年までに7,000億ドル(約84兆円)に達成するとしている。 s-ビジネス現象を取り込むものにとっては、将来は明るい。 過去から判断すると、ハイテク製造業者のいくつかは、好調な四半期があるとこの課題をすぐ忘れてしまうことであろう。 開発した新たなビジネス・モデルを前進させようとするものもいるであろう。 後者に金は回ってくる。



  
 今日の普段のビジネス形態から明日のs-ビジネスへ転換する
ジェームス・A・アレキザンダー教育学博士 (James A. Alexander, Ed.D.)

 「そう、私はそれを信ずる」とあなたは言う。 証拠は有り余るほどあり、製品中心の組織体から高業績のs-ビジネスへ転換をしたいと考えることであろう。 ベンチマークはどこにすべきか? ベスト・プラクティスはどこか? 今までのビジネス形態から明日のs-ビジネスへの転換を成功裡に行なうためのステップはどのようにすべきであろう?


冷たく厳しい現実
 そんなに急ぐべきではない。 悩ましい現実は、主要な4変革のうち、三つまでもが予定していた目的を達成あるいはそれを維持できていないということにある。 組織の人に進言している中での私自身の経験でもこれを確信するし、また皆さんの個人的な経験でも多分同様であろう。 過去数年を振り返ってみてほしい。 トータル・クオリティやプロセス・インプルーブメント、あるいはバランスド・スコアカードといったような戦略の打ち上げを経験した時のことを。 発表時点に意図した価値を今も継続しているのはこのうちいくつあるだろうか?


変革の障害
 この後すぐにs-ビジネス変革実施のベスト・プラクティスの紹介を行なう。 がしかし、何をなすべきかを話す前に、何をなさざるべきかを考えるのも重要である。 組織(それを構成する人も含む)が物事を異なったやり方でやろうとした時に、幾度となく繰り返し姿を見せる10個の共通障害がある(図1)。

何故変革は変革をもたらさないのか?
1. 戦略に結びついていない
2. 一時的ブームあるいは一時凌ぎに見えている
3. 短期視点
4. 政治的力関係の現実が変革を弱める
5. 単純な成果に対し壮大な期待を持たせてはいないか
6. 柔軟性が欠如している設計
7. 変革に対するリーダーシップの欠如
8. 測定可能な明確な結果が得られないこと
9. 未知に対する恐れ
10.変革維持の参画意識を結集出来ないこと
         図1. ●なぜ変革は変革をもたらさないのか?

 このいずれもわかるだろうか? 更に詳しい説明は不要と思う。 言うまでもない事だが、これら全ては認識されていて、それぞれに対応する方策がなければならないのだ。 がしかし、これら10個の障害に加えて、s-ビジネスへの転換の場合には、変革の旅に打って出る前に考慮されねばならない特別な挑戦があるのである。


s-チェンジの特別な挑戦
 すでに言われているように、大変な変革(組織の業績に主要な改善をもたらすことを目標とした)はタフである。 それでも、s-ビジネスへ転換をするということは、困難さの度合いがけた違いである。 二つの要因がこの裏にある。

 第1の要因は、従来のビジネスとs-ビジネスの生産物の二つのタイプでの極端な違いである。 まずほとんどの場合、従来の生産物は簡単に目に見え記述されるものである。 一方s-ビジネスの生産物は触れることができない。 エバート・グメッソン(Evert Gummesson)ならこのことを最も雄弁に言ったことであろう。 「サービスは売ったり買ったりすることはできるが、足の上に落とすことはできない代物だ」と。 触れてみることができないという複雑さが、追加されたものへの挑戦だけでバーが高くなる。 そのうえに、二つの生産物のタイプ間での他のいくつか主要な違い、図2に示しているが、これについても注意しておく価値がある。

生産物比較: 製品対サービス
製 品 サービス
生産されるもの。 実施されるもの。
生産される製品が目指すのは画一性。 実施されるサービスが目指すところは独自性。
顧客は生産に参画せず。 顧客はサービス実施にしばしば参画する。
仕様との比較で品質管理が内部で行われる。
不適切に生産されればリコールされる
期待値に対しての品質管理を顧客が行う。
不適切な実施があれば謝罪と補償が唯一の頼みとなる。
生産労働者の士気とスキルが重要。 サービス提供者の士気とスキルが決定的に重要。
   図2. ●生産物比較: 製品対サービス

 いかに生産し、市場を見、販売し、提供し、サービスし、そしてs-ビジネスの生産物業績とs-ビジネスそのものの成功を測定するかにおいて、これらの相違点は基本的なところで影響を与えることになる。 製品主体の組織を管理するのに、従来は非常にうまくいっていたことがs-ビジネスの世界になると効力を発揮しなくなる。 このために、今までとは異なった性格とコンピテンシーを持った人が求められ、異なったマネジメント・システムも必要となり、業績に報い企業全体をガイドするにも、異なった指標が評価されなければならなくなる。 これらはさらに複雑になる。 というのは、大部分の場合、s-ビジネスが従来からの製品を生産し販売することもあるからである。

 s-ビジネス転換の困難さを複合化させている第二の要因は、組織文化にある。 管理コンサルタント会社であれ、あるいは銀行、ソフトウエア会社、はたまた重機製造会社であれ、トータル・クオリティあるいはプロセス改善での原則と実績は真実を告げている。 すなわち、人がすぐに納得できる常識レベルの確固たる要素が、これらモデルには組み込まれているのだ。 誰が品質に反対するであろうか? 無駄を無くすのを誰が望まないというのだろう?

 そして困難であるにもかかわらず、組織内の全てのレベルの人たちは、少しずつ新たなやり方の信条を受け入れる。 更に、マネジメント・システムに多少の変更を加えながらも、最終的にはこれら新たな重要企画を組織文化にしてしまうのである。

 ところがs-ビジネスではそうはいかない。 文化はそれを変更することを忌み嫌い、現状維持のためには何でもする。 s-ビジネスは既存文化に対する正面突撃であり、組織の防御機能はどんな方法ででも抵抗する。 ほとんどの場合、基本的な問題は、事を取り仕切っている人は製造、市場活動、販売、提供、およびサービスで特別優秀だったことでその立場になったということ。 製品は彼らの専門であり、その専門で昇進できたのである。 (製品で作られた)彼らの過去の成功が、文化を生み育て、成長させるのに役立っている。 その文化とは、製品関連での成功を生み、息づかせ、強化するもので、ビジネスの他のやり方を避けるものである。

 この状況では、製品サポートで必要であるとの理由でやむなく受け入れられていたサービスは必要悪であった。 サービスは従来からコスト・センターであり、販売あるいは顧客満足のいずれかのためにしばしば無料の品物に値切られてしまう代物だった。 s-ビジネスには、考え方において180度の思い切った方向転換をすることが求められる。 サービスは今や組織の基本的な生産物であり、真に付加価値となり、市場での差別化で能力を発揮し、そして高利益率収入の鍵であるとの見方をされなければならない。 役員は、今や顧客が長い間そう見ていたように、全体のソリューション・パッケージの中で二次的役割の消耗品として製品を見る必要がある。 信じこんでいた顔に直接飛び込んでくるものだから、これは生易しい転換ではない。

 そこで事の真実は、昨日成功したそのものが今日の成功の足を引っ張るものとなっているということ。 s-ビジネスへの考え方の転向を成し遂げるのは、最高レベルのリーダーシップの挑戦になる。


s-チェンジを実践するための10のステップ
 そうは言っても、幾百もの組織がs-ビジネスへの転換を成功している。 s-ビジネスへの動きを邪魔するものがあることを知ったと同じく、転換を成功させるために模範となるべきベスト・プラクティスがあることも知っている。 以下はスムースにまた容易に実践を成功させるための10のステップを紹介する。

1.組織のs-パフォーマンス(実績)とs-レディネス(用意状況)の現状を決めよ。  これは最も重要で最も強く要求されているステップである。 既に提供しているサービスの強さや弱さを、顧客の期待値、ニーズ、および競争力の観点で実績を比較しながら、社外を見てみる必要がある。
 次に社内を見て、s-ギャップの大きさとそのギャップを埋めることができるかの実現可能性を決めるために、組織全体にまたがる評価を行なうべきだ。 この評価にはマネジメント・システム、人的可能性、および文化の分析を含めるべきである。 このステップで時間や金銭、それに痛みの観点での必要投資が明らかになるのである。

2.ビジネス戦略を調整し、新規フォーカスをサポートするようにせよ。  s-ビジネスへのシフトがビジネスへ与える衝撃は、大きなものから根底を揺さぶられるものまでの間のどこかに相当する。 この変化を反映させ、市場の現実に沿ったものにするためにも、戦略を再検討しなおす必要がある。

3.明確な目的と正当性を作成し説明せよ。  転換の必要性は、すぐには理解されず、また組織の大部分からは、初めのうちは見向きもされないであろう。 考え方に真剣に取り組む姿勢とともに、簡潔に目的が明確になっており、充分に表現され尽くされた正当性があることが、欠かせないステップの中でも第一のものである。

4.上位役員にs-スポンサーシップとオーナーシップを完全に持ってもらうこと。 言うは易く行なうは難し、されどやらねばならぬ。 過去の成功を成し遂げた人と、今劇的に変更しようとしているシステムの中で力を振るっている人は、同じ人なのである。 支配層が革命をサポートするのがほとんど無いということを想い起こしてもらえれば、変革のケースは組織の生存のためにはこれしかないとの見方をすべきではないだろうか。

5.全てのステークホルダーの参画を得、そして知らしめよ。  変革成功に秘訣があるとすればこれがそれである。 s-チェンジにより損得関係があるものとしてのステークホルダーは誰でも、何がなされ、それは何ゆえで、自分達にとっての利点の可能性について示されている全ての関連情報を持っていなければならない。 さらに言うならば、個々の課題に取り組む個人の姿勢と最後の結果に対して公約する度合いには、直接の関係があるということである。

6.s-ビジネスの新たなやり方をサポートするように人の管理システムを変更せよ。  s-ビジネスへの転換は今までとは異なった期待値、異なった目標、異なったツール、異なったプロセスと手順、異なった報奨システム、その他もろもろの異なったものを要求する。 人の管理システムの全ての要素は実施が始まる前に再考されねばならない。

7.適切なリソースを割り当てよ。  安く行なうべからず。 経験ある外部のエキスパートもつれてくること。 研修への投資を厚くせよ。 なぜなら、確保せねばならない多くの新たな知識やスキルがあるからである。 これらは人に依存し皆に変更するチャンスを与えることになるが、現実は組織のある割合の人は必要な修正をしたがらないということである。

8.進捗を監視せよ。  いくつかの到達点をセットし、定期的に成功かどうかをレビューすること。 充分に検討され尽くされた変更計画であっても、何ができ何ができていないかに沿った計画の修正は必要である。

9. 全体的に考えよ。  全ては相互に関係しているということを忘れるべからず。 システムの一部分の変更が他にも影響を及ぼす。 迅速に成功させようとして手短に得やすいものを捜すのも賢い方法かもしれないが、それが他のものすべてにどのように影響するかを考えたうえでの計画であるべし。

10.危機感を持て。  s-ビジネス転換の正当性を示す論理的事実や数値は重要である。 しかしながら、注意を持って臨まなければ、更なる分析が必要で「事実を充分に熟慮する」ための時間が必要だとして、s-ビジネスへの動きは翌月まわし、翌四半期、あるいは翌年にまで延期させられることになる。 そのとおり、情報も重要、きちんとした計画もなければならないし、また転換の核となるグループも形成されていなければならない。 それでも、変革にあたっては時間が勝負で、延ばし延ばしにした優柔不断さが状況をさらに困難にする。 現状を打破し動きださせるために主義を吹聴し心理的な勢いを作り出すのが肝心であるが、このためにはリーダーシップが必要なのである。



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